前世占い師の立花破月です。今日は私が体験した不思議なお話をしましょうか。
もう20年近く前のことです。当時私は峠を走る走り屋でした。
仲間と毎夜毎夜爆音を轟かせ走る。
私の車はカローラレビンAE101スーパーチャージャー、柿本仕様。と言っても車がわからない人には全く分からないと思うのですが、要は爆音ってことで。
柿本マフラーのキャッチフレーズは「音に乗れ」でしたからねぇ・・・いいマフラーでしたよ。
で毎夜毎夜峠で遊んでいたわけですが、当時はドリフトが流行っていましたが私の車はドリフトに向きません。なのでもっぱら峠をいかに速く走るか。でした。
まあドリフトは峠を早く走るためのテクニックなのですが、当時は魅せるドリフトが流行っていたんですよ。
その日は女友達2人、三人で超山奥の初心者用ドリフトコースに向かいました。
と言っても公認ではありません。ちょうどいいコーナーがあって人家がない所だったので安心してドリフトができると言う。警察もそんな山奥まではよほどじゃないときませんしね。
0時に仕事が終わって(真っ当なレストランでの調理仕事です)、そのまま友達を拾って走りに行ったので、ついたのは1時過ぎぐらい。まだまだ人もたくさんいましたが、だんだん自分が眠くなってきたので、2時ごろには山を下ることにしました。
草木も眠る丑三つ時。と言うやつですよね。陰の気が一番強くなる時間です。
私は誤算を一つしていました。その山から街に戻るには、お化けが出ると有名な霊園のある山を通らなきゃいけなかったんです。
でも一人じゃなかったし、そんな事すっっっかり忘れていましたけどね。
心なしか闇が濃いなあと思ったのを覚えています。
もうすぐ夜景が見える場所だ・・・と言うところまで下ってきました。
その時、ブレーキが急に聞かなくなったんです。
私の車はMTです。エンジンブレーキを効かせて下りてきているので、ブレーキオイルが熱くなり気泡ができてブレーキが効かなくなる現象にはなりにくいはず。
この現象が起きるとブレーキが効かなくなるのですが・・・。
「えーーーー!?」
下っているのでスピードはどんどん上がります。・・・ヤバい。
その時車の横から大きな白い手が車を握るのが見えました。
フロントガラスに霧のような大きな指が見えています。
その手は車を握って、どんどん前に持っていきます。
子供がミニカーで遊んでいるように。
目の前に夜景の広がる崖が見えてきました。カップルが何台か車を停めて楽しんでいます。
このままだったら、カップルの車を巻き込んでがけ下に転落する!
私はサイドブレーキを引いて、ブレーキを思いっきり踏みました。
車は異音を立てて停止。カップルの車と20cmほどしか離れていないところで停まりました。
「助かったー」
気を取り直して発進。大きな手は消えていました。
あれは何だったのか
あの大きな手はなんだったのでしょうか。
意志は感じられなかったんですよね。巨人の幽霊?いやいや。
その山は幽霊が出ると言われる霊園があったりしたのですが、あれは人の霊ではないような気がします。
あえて言えば、作り出された何か。でしょうか。
「あの山は幽霊が出るんだって」
と言う噂が作り出したもの。人間は時に異形の魂を作り出すことがあります。
ファンキー中村さんがお話していた怪談の中に、心霊スポットを作る。と言うお話があったのですが、あの手も噂によってつくられたのではないかと今は思います。
意志もなかったし、魂も感じられませんでしたからね。
事実はどうかわかりませんが・・・助かってよかったなあと思います。
それからあの山には夜中に上るのやめました。怖いもん。
ファンキー中村さん怪談本:また、いる…… (フォア文庫 怪談 5分間の恐怖) [ 中村 まさみ ]